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だからどうして今、自分がふかふかのソファに寝ていて、ブランケットが掛けられているのか。
吹き抜けの高い天井を見上げているのか。
モデルルームのようにオシャレで広い部屋にいるのか。
見当もつかなかった。
「あっ、起きたの?」
頭を抱えている私の元に、優しげな男性の声が届いた。
勢いよくソファから起き上がって声の主を探すも、
「うっ……」
急に起き上がったせいで頭がくらっとして、またソファに倒れた。
「大丈夫?」
ぐわんぐわんする頭に手を当てていると、声をかけてくれた男性が私のすぐそばまで駆け寄ってきた。
「……美人だ」
思わず心の声がもれてしまうほど、その人は美しかった。
ふわっとした栗色の髪の毛にかかるウェーブはパーマにしては自然すぎるから、多分くせっ毛なのだろう。
男性にしては白く、シミ一つない肌。
一切の警戒心を与えない優しげな瞳。
私を見下ろす背格好の大きさからしてどう見ても男性なのだろうけど、顔の造形があまりにも綺麗で、イケメンというより美人の方が相応しいと思った。
「大丈夫?」
身を屈めて私を心配そうに見下ろす美人さん。
正気を取り戻した私は、そこでようやく大事なことを尋ねた。
「あの、私はなぜここにいるのでしょうか?」
「うん。君ね、道端で倒れてたんだよ」
「オウ、ノー」
いつかやるとは思っていた。
ついにやってしまったのだ。
「正確にはお弁当屋さんの少し前で倒れてたの」
美人さんがくすっと笑う。
笑った顔はさらに綺麗だ。
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