第二話 再会の乾杯

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 「…………から」    千紘さんからの返事はあまりにも小さくて聞こえなかった。  「すみません。もう一度お願いします」  6畳ほどの静かな個室なのに、最初の言葉が全く聞こえなかった。  喋っていなかったんじゃないかと思うくらい小さすぎた。  それとも私が気づかぬうちに私の耳が宇宙に行っていたのだろうか。  その可能性も否定できない。  うーんと頭を悩ませている私に、「だからっ」と半ば投げやりな千紘さんの声が聞こえた。  ぱっと顔を上げると、いつもより頬を赤くして、私を咎めるような目をした千紘さんと目が合った。  「どきどきするからやめなさいって言ってるの」  どきどき……か。  胸がどきどき。動悸がするからやめてほしいと……。  私は頷いて、納得した。  「わかりました。以降、気をつけます」  正直なところ、どう気をつければいいのかさっぱりわからなかった。  だけど、やめてほしいと言われた手前、嫌だと否定することなどできない。  これからはもう少し考えてから発言をするようにしようと心に決めた。
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