第三話 神様の正体と予期せぬお願い

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◇◇◇  〇〇社100周年創立記念パーティー当日。  憂うつな気持ちを抱えて、私はタクシーから降りた。  広い入口には何人ものホテルマンがお客様を出迎えていた。  「……すごい大きい」  私が暮らしてるマンションよりずっと大きいホテルだ。  芸能人の結婚式や財界人の会合にも利用されるくらいの豪華で格式のあるホテルらしい。  如月さんからのメールに記載されていた案内状から、ホームページを確認すると、今日の宴会場となる地下ホールには2000人収容できる広さだと書いてあった。  実際の招待数はその半分以下の人数なのだろうけど、人との関わりが極端に少ない生活をしているせいで、大勢の人が集まる場所へ向かう前はいつも気が重い。  「乃々花っ、じゃなくてっ、乃々先生!」  広い入口に立つホテルマンたちの中から、如月さんが走ってくる。  普段はお洒落な私服なのに、今日はびしっとスーツを着て、金髪も後ろに流してしっかりと固められていた。  「如月さん、男前ですね」  「ははっ、ありがとうございます」  人前に立つときの如月さんは〈男〉になる。  私はそのままでもいいと思うけど、如月さんは社会人としてTPOに合わせて自分を変えていた。  こうやって見ると、如月さんは長身で顔もハンサムだから、外用になるとただのイケメンになる。  「乃々先生も素敵です」  「ありがとうございます。如月さんのおかげです」  如月さんからは三着のドレスが届いた。  ホワイトのドレス、淡いブルーのドレス、そして今着ているサーモンピンクのドレス。  このドレスにした理由は襟元が詰まっているところが上品だったから。  少しスカート丈が短い気がするけど、如月さん曰く、低身長の場合はスカート丈が短い方がバランスが良く見えるそうなので、私の背格好にはこの丈が正解なのだろう。  不得意なジャンルに関しては大人しく得意な人の意見に従うようにしていた。  「髪の毛も可愛いじゃない。自分でやったの?」  如月さんが私の耳元に近づいて、いつもの調子で褒めてくれる。  「はい。動画を見ながらやったらなんとかできました」  首元が詰まっているから髪は上げた方がいいと思って、なるべく華やかになるように後ろで編み込みをしたアップスタイル。  そして、これまた如月さんにいつかの誕生日にプレゼントしてもらった一粒ダイヤのイヤリングをつけてきた。  見た目だけは23歳の大人の女性に見えるように仕上がったと思う。
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