第一話 お神との出会い

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 「お神? あ、うん。最後計った時は185センチだったかな」  「185センチ……」  私より30センチも大きい。  神様だから当然か。  お神につれられて、私はキッチンの前にあるダイニングテーブルにやってきた。  にしても、広いリビングに広いキッチン。  キッチンとダイニングルームだけで40畳ほどはあるだろうか。リビングも同じか、それ以上の広さはありそうだ。  一体何人の人が住んでいるのだろう。    そしてそんなことよりも、大きなダイニングテーブルにずらーっと並べられた食事の数々が私の心を奪った。  「私、明日死ぬのかな?」  これが最後の晩餐だよと言われても、きっと信じるだろう。  「ははっ、何言ってるの? まごころ弁当の総菜をお皿に移しただけだよ。ごはんはさっき炊いておいたから今持ってくるね。スープは僕が作ったのだけど、よかったら」  「……お神」  「さっきからそのお神ってなに?」  「本当にいただいていいのですか?」  「えっ? うん、もちろん。どうぞ召し上がれ」  お神は炊き立てほかほかのご飯をよそったお茶碗を私の前に置いて、にっこり微笑んだ。  「い、いただきます!」  私は心の中ではなく、今日は目の前にいる五穀豊穣のお神に向かって両手を合わせた。  そして、用意された箸を手に取ると、無我夢中で――食べた。  「おいひい~!」  私はもともと食べることが大好き。  大食いとは言えないものの、同じ年頃の女性の二倍から三倍の量は食べられるのに、この一週間は栄養ドリンク、ゼリー飲料、冷凍食品で保っていた。  「ご飯お代わりする?」  「いただきまふっ!」  (うなぎ)の厚焼き玉子を頬張りながら、空になったお茶碗をびしっと差し出した。  我ながら、肩から指先まで美しい一直線だ。  千紘さんは笑いをこらえながらお茶碗を受け取って、空のお茶碗にほかほかの白米を山盛りよそってくれた。
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