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「彼女にキスされて嫌な男がこの世に存在するならそいつはゲイよっ!」
「……ゲイ。千紘さんが」
まさか、女性が嫌いって……。
ああそうか、そういうことだったのか!!
「ばかっ! 早とちりしてんじゃないわよっ。可能性の話よっ。倉木先生がそうだとはまだ決まってないっつーの!」
「ああ、そうでしたね」
ついつい想像が先走ってしまう。
「まあ、もしそうだったらあたしは嬉しいけど」
「えっ」
如月さん、もしや狙ってる?
背も高いし顔も綺麗だし、如月さんの好みといえば好みなような……。
如月さんはまた妄想が始まったのか、見るからにすけべな笑みを浮かべていたが、私は私で考え込んでいた。
私とキスしたくないということは……千紘さんはゲイ。
いや、単純に私とキスするのが嫌な可能性もある。
だけど私とは仮の恋人だから、そもそもキスなんて行為まで考えていないかもしれない。
如月さんが思春期の少女(少年?)のようにキスキスと何度も繰り返すせいで、私の頭の中はキスでいっぱいになっていた。
◇◇◇
「乃々花ちゃん、聞いてる?」
「へいっ!」
しまった。ぼーっとしてた。
「へいって……またずいぶん威勢がいいね」
「えへへっ……」
へいってなんだ。今どきお寿司屋さんでも聞かないのに。
恥ずかしくて笑ってごまかした。
ちょっと遅い朝ごはん兼昼ごはんを食べた後、15時頃に千紘さんから連絡がきた。
〈ケーキ買ったからおやつに食べない?〉
私は完全に餌付けをされたようだ。
どこに行ったらこんなケーキが売ってるのかわからない芸術品のようなケーキをいただいていた。
そんな時に、なぜか如月さんの言葉を思い出してしまった。
私のことをガキだと言うけど、キスの話題だけであんなに盛り上がれるなんて、如月さんだって子どもだ。
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