第六話 初めての衝動

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 「来週の水曜日、箱根行かないって言ったんだけど、聞いてた?」  「すみませんっ。聞いてませんでした」  「あははっ。正直だなぁ。日帰りだけど、どうかな?」  「えっ、泊まらないんですか?」  東京から日帰りで行ける距離ではあるけど、せっかくならゆっくりしたい。  美味しいごはんを食べて、温泉に入って、だらだらしたい。  千紘さんが忙しいなら一人でも泊まりたい。  「えっ、逆にいいの?」  千紘さんは目を丸くして私に尋ねる。  「どういう意味ですか?」  逆にとは?  「……いや、乃々花ちゃんが嫌かなって、思って」  視線を逸らして口ごもる千紘さん。  「私がどうして嫌なんですか?」  「だって泊まりって、一日中一緒だよ? もちろん乃々花ちゃんが嫌なら部屋は分けるけど」  「嫌じゃないですよ! 千紘さんとなら絶対楽しいですもん」  「っとに……嬉しいこと言ってくれるなぁ」  千紘さんが目を細めてはにかむ。  いつもより幼く見える笑顔だった。  「あっ、でも部屋は分けた方がいいですね」  「えっ……あーまぁ、そうだよね」  千紘さんの気落ちしたような声も気づかず、私は想定される危機を真剣な顔で伝えた。  「私多分寝相悪いですし。千紘さんのこと蹴り飛ばすかもしれないです。寝ぼけて枕とか投げつけるかも……とにかく、危害を加える恐れがあるので、部屋は別にしましょう!」  千紘さんの身を守るためなら部屋は別の方がいいだろう。  「えっ? それが理由?」  「はい。千紘さんに怪我でもさせたら大変ですから」  「怪我してもいいから一緒がいいって言ったら?」  「えっ……」  怪我してもいいって、どういうこと?  なぜそんな危険を冒してまで……あっ! Mなのかな?
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