1209人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
「すみません。私」調子に乗りましたと言って、謝ろうした矢先、体が思いきり引き寄せられた。
捕獲されたかのように、私は千紘さんの大きな胸の中にがっちりと掴まれてしまった。
「こっちは大人でいるの必死なんだけど」
私の耳元で不機嫌を露わにする千紘さん。
「はひ。すみません」
普段よりも低く重い声に耳元がぞくっとした。
「男なんて何歳になっても子どもなの」
「……えっ」
千紘さんが〈子ども〉など、想像がつかない。
千紘さんの言葉の真意が理解できずにぽかーんとしている私に、千紘さんの真面目な声が届く。
「乃々花ちゃんのこと怖がらせたくないから」
「……へっ」
「今後そういう発言には十分気をつけるように」
「……はひ」
千紘さんに反省を促された私は日本語とも言えない返事しかできなかった。
如月さんのせいだ。
如月さんがキスキスキスキス言うから。
それは自然なことだと言うから。
千紘さんなら許してくれるかななんて甘い気持ちで行動してしまったことを心から反省した。
人間のおでこに初めてキスをした日。
私は優しく抱きしめられながら、千紘さんに叱られた。
最初のコメントを投稿しよう!