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「次は湯もちですよね」
「うん。甘いの続くけど大丈夫?」
「はい。全然平気です。むしろどんとこいって感じです」
「あははっ、すごいなぁ」
千紘さんは楽しそうに笑いながら私を見つめていた。
平日ということもあり、人の数もそこそこで、目的地にはスムーズに着いた。
次に目指すお店は〈湯もち〉で人気のお店。
「何個食べる?」
「えっと、じゃあ3つで」
「はははっ。了解」
竹の皮に包まれたふわふわの湯もちは、白玉粉に練り羊羹を混ぜた柚子が香る上品なお菓子だ。
「そこ座ろうか」
「はい」
千紘さんから湯もちを3つ手渡され、早速一つ口にした。
「……わぁ~」
例えようのないふわふわの柔らかさはまさに新食感。
柔らかくて口の中にすぐに消えてしまう。
全然食べたような気がしない。
味を確認するように、もう一つ、二つと、口にした。
「ん~美味しい」
「えっ、もう全部食べたの?」
「これは多分飲み物ですね」
「いや、おもちだよ?」
「飲み物でした」
「違うよ?」
千紘さんは否定するけど、私からすれば咀嚼がほとんどいらないものは飲み物と同じなのだ。
「もうごはんたけど食べれそう?」
「はい。いい腹ごなしになりました」
おやつを食べたことで胃腸が活発になった気がする。
「乃々花ちゃん、腹ごなしの意味知ってる?」
「はい。もちろんです」
「うーんおかしいな。使い方間違ってると思うんだけど」
「おかしいのは私の専売特許じゃないですか」
「あはははっ、それ自分で言っちゃうんだ」
「もう自分で言っちゃいますよ!」
こっちは開き直って生きてますから。
にししっと笑っている私の肩を千紘さんがぐいっと引っ張る。
「っとに、可愛いなーもうっ」
わけがわからないまま、私は千紘さんに抱きしめられていた。
こんな道端で抱きしめられているせいで、行き交う観光の人たちがじろじろ見てくる。
「っ……」
うん。これはちょっと恥ずかしいな。
だからといって突き放しても千紘さんに恥をかかせてしまうから、千紘さんが腕を解くまでじっとしていた。
「急に、ごめんね」
時間にしてどれくらいそうしていたのかはわからなかったけど、千紘さんのつぶやきとともに背中に回された腕も離れていった。
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