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さて――思い立ったら行動! が、家訓の柴咲家。
私はさっそく千紘さんにメッセージを送った。
〈こんばんは。おかげさまで、さっきひと段落しました。明日の予定ってどうでしょうか?〉
メッセージを送り終えて携帯電話を置いてから、温かい紅茶でも飲もうとキッチンに向かうと着信音が鳴り響いた。
「えっ、電話?」
こんな時間に電話をかけてくる人など一人しか思い浮かばなかったが、携帯電話を手に取って、画面に表示された名前は想像していた人物ではなかった。
「もしもし」
《乃々花ちゃん、仕事終わったの?》
電話の相手は、たった今メッセージを送ったばかりの千紘さんだった。
「はい。さっき送って、今休憩していたところです」
《お疲れさま。根詰めて作業してたから疲れたでしょう?》
「えっと。疲れは疲れたんですけど、千紘さんが食事の面をサポートしてくださったおかげで、いつもより元気です! ありがとうございます。千紘さんのおかげです」
本当なら、電話ではなくまずは面と向かってお礼を伝えたかった。
集中して作業をして、こんなに疲れが残っていないのは初めてのこと。
きちんとした栄養を食事で摂ることの大切さを改めて実感した一週間だった。
《ううん。僕は特別なことはなにもしてないよ。でも、少しでも乃々花ちゃんの役に立てたなら嬉しいな》
「少しどころじゃありません! 食事をおろそかになりそうな時に千紘さんがメッセージくれたり、美味しくて栄養のあるスープを用意してくれたから、ふらふらになることなく最後まで頑張れました。本当に、嬉しかったです。ありがとうございます」
《うん。良かった》
「あの、それでさっきメッセージでも言ったんですけど」
《今日じゃダメかな?》
「へ?」
間髪入れずにやってきた返事に、気づいたら間抜けな声が出ていた。
《乃々花ちゃんが疲れてるのわかってるけど……。今、会いたいんだけど。ダメかな?》
「えっと、でも、私まだこれからごはんですし、千紘さんもお仕事終わって疲れてるでしょうから」
《僕は大丈夫だから。乃々花ちゃんさえよければうちでごはん食べない?》
「えっ!」
なんだって!?
《夕飯にビーフシチュー作ったんだけど、残りがあるから良かったら》
「行きマスっ!」
ビーフシチュー、大好きです。
想像しただけで、口の中によだれがあふれてくる。
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