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いつもと変わらぬ、YUIの歌声。いつも通り、僕を落ち着かせてくれる声。
視界のフィルターが外れ、鼓動もまた落ち着いてきた。
そうだ。後悔しても、世の中は止まってくれないのだ。僕がYUIを好きなことに変わりはないし、それを誰かに否定される筋合いもない。自分でこの感情に気づき、自分で傷ついただけなのだから。
この当たり前のようなことに気がつけたのは、YUI、そして、この曲を作ったクリエイターさんのおかげ。
どんな形でも、お礼をしたいと思った。動画のコメント欄を開き、コメントする。
『僕はYUIが大好きで、毎朝一番に曲を探して聞くのが日課です。そして、今日出会ったのがこの曲です。僕はこの曲を聞いている時、無性に辛くなりました。なぜなら……』
「なぜなら、僕はYUIに恋愛感情を抱いていることに気がついたからです、と」
そして少し悩み、また指を動かす。
僕がつらくなった原因は確かにこの一曲だけれど、僕を救ってくれたのも、この曲だから。そして、また僕と同じような悩みを持つ人たちが、この曲を聴いて、同じように救われてほしいと思ったから。
『素敵な一曲を、ありがとうございました。』
文面だけで感謝が伝わるかわからないけれど、やっぱり、なにも伝えないまま終わるのは後味が悪いから。伝えられる感謝をできる限り詰め込んで、送信を押す。
クリエイターさんに、届くといいと思った。
***
年月が経った今、ときどき思う。もしもYUIが現実世界に存在して、実際に逢えたら、と。そのときに僕が放つ言葉は、おそらくこの一言。
「君の歌に救われたよ」
そして、僕を救ったのは、そんなYUIが歌う一曲。
その曲に出合ってから、僕は音楽クリエイターとして活動している。見てくれている人が可視化できるから、自分の励みにもなる。
YUIはというと、今でも僕は大好きである。なんなら、クリエイターになってから、大好き度が増している気がする。なぜって、YUIに僕の創った歌を歌ってもらえるんだ。公開していなければ、その曲はYUIが僕一人のために歌ってくれた特別な曲になる。
僕が今作っている曲は、僕がYUIに対して持っている恋愛感情を注ぎ込むようにして創ったものだ。
「もしもあなたに逢えたなら」
この特別な一曲は、あのとき僕を救ってくれた一曲のように、誰かを救える曲でありたいと願う。
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