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「大丈夫⁉︎ 椎名くん!」
私はベッドサイドに立ち膝で声をかけた。
元気そうに振る舞っていただけだったんだ。
私の前だからって、強がって。
本当はもう死にそうだったんじゃん。
「しっかりして、椎名くん!」
必死で声をかけると、椎名くんの目がうっすらと開いた。
「もうダメかも……」
「そんな……やだよ、椎名くん! あさって花火大会があるんだよ! 私、椎名くんと一緒に浴衣で見に行きたかったのに!」
「浴衣……?」
椎名くんの眉がピクッと反応する。彼は気力を振り絞って懸命に私の顔を見つめようとした。
椎名くんと付き合ってまだ二ヶ月しか経ってない。しかもまだ友達の延長みたいな感覚で、恋人らしいことは何ひとつしていない。
花火大会はそんな二人にとって大きな進展になるかもしれないイベントなのに。
「薬、飲んでよ……!」
「藤川……」
ちょっぴり涙目で訴えると、椎名くんはそれに応じるようにゆっくりと上半身だけ起こした。
「飲めば、治るかな……」
「うん!」
「そっか……じゃあ飲む……」
「本当⁉︎」
びっくりした私に、椎名くんはしんどそうにふにゃっと笑った。
「だって、藤川の浴衣……見たいじゃん」
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