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風邪ひいたから助けてくれ……。
と地獄の底から電話しているような声に絆され、薬局でレトルトのスープやスポーツドリンクや風邪薬を買ってきた、夏の終わり。
本当は明後日花火大会があるから椎名くんを誘おうと思っていたんだけど、まさか本人がこんな状態だとは。
「ご両親やご兄弟はどこへ行ったの?」
「菌が移るって……じいちゃん家に避難した」
「ひどいな」
「しょうがない……母ちゃん今、臨月だし……力士の兄貴はちゃんこ鍋しか作れないし……親父はうるせーボイパで応援してくるし」
「それはウザいかもしれないな」
椎名くんのお父さんはボイパを始めてからそろそろ5ヶ月になるそうだ。継続は力なり。嫌な方向に力になってるけど。
「あっ、お姉さんは⁉︎ お姉さんは看護師の卵になったんじゃなかった?」
春頃、椎名くんのお姉さんが看護学校に入学したと聞いていたのを思い出して聞いてみると。
「今、夏休みで……友達とハワイ旅行に……」
「ああ、運悪いね」
それで近所に住んでいる彼女の出番となったわけだ。理解した。
しかし、薬を飲まない椎名くんをどう説得したらいいものか。
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