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「僕は優太さんも知っての通りαです」
「うん、さっきも言ってた」
「…僕はαが故に全ての事を両親から敷かれたレールに乗って、ここまで生きてきました」
「…うんっ…」
「小さい頃から英才教育を受け、学校も全て親が選んだ進学校に進めるようにと勉学に励み、有名大学も首席で卒業、そして今の会社に勤め始めました」
これがエリート街道まっしぐらのα様。
聞いていても当たり前すぎて、俺は他のαなんかは反吐が出る程嫌いだ。下層民のΩからしたら尚更。でも一平は違う。性なんか関係ない。
「今の会社は両親が贔屓にしている食品会社で、優太さんも絶対に聞いたことがある会社です。僕はそこで各支店の統括を行っています。だから、あの倉庫のこともその他の細部まで理解しているんです」
すげぇなの一言。俺より年下なのに俺よりもあまりに重たい仕事と責任を任され、忙しいはずなのに、きっとテキパキと仕事をこなしては、俺のために時間を割いていてくれていたのだろう。
「ここまでは順調でした。仕事も波に乗り、自分という存在を確立することが出来ていると思っていた矢先です、僕の心は要らないものに縛られることになったんです」
「…も、もしや…」
「はい、そのもしやです…なんとなく察しますよね?その察しの通り、両親と会社の社長で手回しをし、僕の為にと社長の娘さんを僕に紹介してきたんです」
「…ま、まじかよ…」
「ええ…ただ、よく考えてみると両親からすると僕の為では無いんです。後継者を残すため、このαの性と如月の姓を継ぐためにと裏で動いていました…そして、社長も自身の会社を守るために娘さんを僕に紹介してくれた経緯もありました」
君の本当の心はどこに置いてきたんだろう。
素直に好きな人を好きになれず、αという宿命を背負わされ、どこまでも自分の道では無い道を進まなければならない君の本当の気持ちは、どこに置いてきてしまったのだろう…
「どうして…僕は女性を愛せないのに…でもそんなことは両親に伝えられない。何故なら両親は男と男の関係を頑なに気嫌いしていたんです。僕たちは男同士でも子供が出来る性なのに…」
男のαと男のΩの間でも子供は出来る。
ただ、これだけの大物であれば、世間体っていうのも纏わり付いてしまうのかもしれない。俺には到底理解が出来ない世界、そこで一平は生きている。
「そんな縛られた僕の気持ちとは裏腹に、彼女は僕に一目惚れだったようで、僕の為にと沢山尽くしてくれて、いつの間にか同じ空間で過ごすようにもなりました」
「一平…お前…」
「これが普通の生活なんだろう、この先もこのまま過ごしていけば何事もなく、何不自由なく過ごしていけるのだろう…両親も会社も、そして彼女も幸せになるんだろう…そう僕は心に言い聞かせていたんです」
何故君は、そこまで自分を閉じ込められる…?
何故そこまで、自分を犠牲に出来る…?
違う、何かが違う。一平、君はそんなんじゃないはずだ。俺の横にいる一平は、この空間を『幸せ』と言ってくれたじゃないか。
「夜の営みも頑張りました。でも、やっぱりうまくいきません。いくわけが無いんです…だって僕は、男が好きだから…」
「一平…」
「もう限界でした…帰る場所は、愛してあげられない彼女と僕を愛してくれる空間。それでも決められた宿命からは逃れられません」
「僕はどうしたらいいのだろう…何が幸せなんだろう、僕は何で満たされたらいいのだろう…そう考えていた時に出会ったのが…」
『優太さん、あなただったんです…』
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