ソファを買いに行こうと思った話

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 翌日、声はすっかり出なくなっていた。これから始まる5日間のお盆休暇に気が緩んだのと、一人暮らしで話す必要がなくなったためであろう。  唾も飲み込めないほどの激痛と、一向に収まらない節々の痛み、なんの飲食のやる気も出ない倦怠感に、意識が遠のいては目が覚めるのを繰り返していた。  今まで当たり前のように健康だったことが、そうではない気がした。どの体勢でいても苦しい。お腹は空くが食べる気力がない。  このまま消えてしまうような気がして、なんとか元気を出そうと画策する。  朝から晩まで、仕事中までも考え続けている、沢山の小説のアイデア。いつものように考えようにも、なんだかどうでも良くなっていた。  何より恐ろしかったのは、今までどんなに嫌なことがあっても、推しを見たり考えたりするだけで、身体の奥底から高ぶりを感じていた私が、推しのことを考えるどころか、推しを目にしても、全然わくわくしなかったことだった。 (あれ……もしかして、人ってこんな感じで死んでいくのか?)
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