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電話からすぐに、救急車のサイレンが聞こえてきた。救急隊員に色々聞かれたが、すっかり声が出ず、呼吸もままならない状態ではちっとも会話になんかならないのである。
ただ、誰かがずっと自分に話しかけてくれているという状況が、自分の存在を確かにしてくれているようで、心からほっとしたのを覚えている。
音程の変わらない救急車のサイレンを断続的に聞いている、その不思議を感じていた。
病院に着いて検査をすると、軽度のコロナと診断された。コロナにかかったのは初めてだった。味も匂いもするのでまさかとは思っていたが、甘く見すぎだった。
入院を期待したのだが、「軽度なので自宅療養で様子を見ましょう」と言われてしまった。薬を貰っただけ。
馬鹿言え。またあの一人の部屋で死にかけたらどうするんだ。もうあの部屋に安寧など訪れるもんか。
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