ソファを買いに行こうと思った話

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 一人の部屋に帰り、とにかく水と薬と、冷蔵庫の食料を食い散らかした。  夜になるとやって来る不安は凄かった。このまま朝を迎えられないんじゃないかと考えるとぞっとした。  真夜中、トイレに立った私は、足を滑らせひっくり返った。どこかに指を引っかけたようで、右手の数本の指から流血した。  涙が出た。呼吸がしづらくぶっ壊れた喉から、仔犬のような高い音が出て、余計に情けなくて泣いた。  トイレの傍で息が詰まりかけたあのときのことを思い出していた。  あのとき、本当は、ただ楽になりたいと強く願っていた。それは、生きたいとか死にたいとかいう答えではなかった。  生に執着しなくなった瞬間があったことが、本当に情けなくて、そして怖かった。
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