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「私も、トモヤと、あの頃みたいに戻りたいと思って、さっき、トモヤが電話してるとき、入れちゃったのよ」
「え? 何を?」
まだ気づいていないの?
「私も、同じ薬をお互いのワインに入れたのよ……!」
ナナミは心臓に強い痛みを感じて、胸を押さえた。
「じゃあ、僕らは……」
トモヤが苦痛に耐えるように、片目をひどくしかめた。
「そうよ、半分と半分だから……」
ナナミはもう身体が辛くなって、テーブルの上に突っ伏してしまった。ガシャン、と食器が音を立て、ワイングラスが落ちて割れた。直後、トモヤも同じようにテーブルに倒れた。
周りの客が悲鳴をあげ、店内は騒然となった。
ナナミとトモヤは朦朧とする意識の中、手を伸ばす。
二人の手はテーブルの中央で触れ合い、熱く求め合うように指を絡ませ、動かなくなった。
おわり
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