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これを自分とトモヤに半分ずつ飲ませれば、二人には出会った頃のような熱が灯る。薬の効果がどのくらいの期間、続くかわからないが、効果が切れるまでには、二人はまたうまくいっていたときのような、キラキラした二人に戻っているはずだ。
気をつけるべきは、小瓶の中身をひとりで全部飲んでしまわないこと。きちんと自分のグラスとトモヤのグラスに、半分ずつ薬を入れる必要がある。
もちろん、他人のグラスに薬を盛るなんてことは、道徳や倫理に照らせば、許されることではない。
だが、自分たちだけではどうにもならない以上、これを使うしかない、とナナミは心を決めた。
「お待たせ」
「ああ」
小瓶を右手に隠してテーブルに戻った。お互いのワイングラスにはまだワインが残っている。トモヤが席を立ってくれれば、すぐに実行できる。
一度会話が途切れたためか、お互いに黙って残り少ない料理やワインを口に運ぶ。
五分ほど経って、トモヤのケータイが鳴った。
ナナミはドキッとしたが、できるだけ顔に出さないようにした。
「申し訳ないけど、ちょっと電話出てくる」
「うん」
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