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刹那
我,河関 京之介と申す。
一,民として生きるもの。
特にない。
吾輩にこれ以外のことに必要だろうか。
日々働き,変哲もない喫茶店で煙草を吸うだけ。
周囲の人間はすべて紫煙越しに視界に入るだけの人生。我の聖域とでも言おうか。
紫煙は,皆が掛ける瓶底のようなものだ。ただそれだけの話であり汚れちまった世の中に,汚れている煙を通すことによってきれいになるのだ。
現実逃避だといわれようが知らない,吾輩にはそれすら純粋無垢のように思える。
なぜなら,吾輩に民にとして生きる事意外に必要だろうか。
よく言われることがある。
それでは,豊かな生活ができない,銭を得ることができない,刹那的人生だと。確かに世は変化しつつある,しかし雨風しのげて一日三食。
いい生活ではないか。
吾輩には,煙草もあるではないか。
なんと贅沢なひと時ではないか。とても文化的じゃあないか。
他の民は胸に手を当て熟考したことあるだろうか。
それがどれだけ豊かで,身になじんでいるか。
富が欲しいとほざくのなら,神が魂を宿す肉体を間違えただけだ。
来世にでも願うといい。
今世で得るもの得たいなら,その空虚に振り回されるといい。
覚悟と一種の胸の鼓動に身を委ねられるのなら。
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