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屋敷の主人が帰宅すると、奥方が出迎えて叱りつける。
「なんだ、騒々しい。」
「騒々しいとはなんですか。今宵は月見の宴の約束ではありませんか。ほれ、お民もここに。」
奥方が窓辺へ誘うと、月夜に照らされた座敷に金色の髪に赤い瞳の女性が、しどけなく座っている。黄色いかすりの着物を着て異国情緒溢れる風情だが、その横顔は黄色人種のもの。目鼻立ちははっきりしているが、平板な顔である。
「お民、元気か」
そうして振り返る。透けるように白い肌が、禍々しさすら感じさせる。
「父上」
そうしてにこにこ笑う娘に奥方は、いつまでこの子が息災でいられるかと悲しい思いだった。外へ出たことはない。日に焼けると肌が真っ赤になるのに医者も呼べなかった。周りのものも哀れがってはくれるが、自分達の死後面倒を見てくれる親戚もない…。
「きれいな髪じゃ」
娘はにこにこと笑って父親に向かって「あい。」と返事した。
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