おくすり

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おくすり

駅は今日も通勤・通学の人々で溢れかえっている。同じ方向に行く人たちの流れに乗ってホームに行き、列に並ぶ。 到着した電車から吐き出されるように下車する人と、それが終わると飲み込まれる乗客たち。 前の人に合わせて進むが、最後の降りてきた人の後ろに移動してホームに戻ってきてしまう。 ホームの端に移動して呼吸を整える。 「大丈夫? やっぱり今日もやめておく?」 そう言って駅員の彼は心配そうな表情でこちらを見ている。 「いえ、今日こそは学校に行かないと」 夏休みが終わって始業式に登校しようといつものように駅に向かい、電車に乗り込もうとした時に今日のような状態になった。 その日は眩暈もして立ち上がれず、壁にもたれ掛かって休んでいた所を彼に声を掛けられて駅員室で休ませてもらった。 家を出る時に体調が悪かった訳ではない。 駅に着いた時も、乗り込む時も何も変化はなかった。 「保護者に連絡して迎えに来てもらうかい?」 「いえ、落ち着いたので帰ります」 「そう、気を付けてね」 まだ人々が駅へ向かう流れを逆走するかのように家に帰った。
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