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「大丈夫、変な薬じゃないよ。僕は人混みが苦手でね、でも電車が好きだからこの仕事に就いたんだけれど辛い時もあってね。その時にこの薬を飲むんだ。そうすると苦しい気持ちが楽になって仕事ができるんだよ」
「別に私は苦しい事は無いんですけど」
「そうかな? 夏休み前から表情が険しかったと思うよ。何か思い悩んでいるような表情だった。電車に飛び込むんじゃないかと心配になるような表情の時もあったよ?」
私がそんな表情をしていた?
信じられない。
いや、でもこの人は私の事を電車に乗れなくなる前から見ていたというのか?
「もし気が向いたら飲んでごらん。薬と言っても噛んで飲み込んでもいいものだからね」
そう言って1粒の薬が入った小袋を渡された。
しばらくどうしようか悩んでからいるうちに駅員さんはいなくなってしまった。
「どうせならこれを飲んで殺された方が楽かも」
そうすればこんな面倒な世界から消える事ができる。
小袋から取り出して何度か噛んでから飲み込んだ。少し甘いような味だったが数分経っても何も変化はなかった。
次の電車がホームに到着するというアナウンスが聞こえ、近くの列の最後尾に並んだ。
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