魔界のネージュ

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魔界のネージュ

渦を巻いたような暗雲から鋭く光る雷が、横に下にと生きているかのように走る。 そして耳を塞ぎたくなるような雷鳴が轟き、背中に黒羽を生やした鳥と人とをかけ合わせたような醜い生き物が汚い声で鳴きながら空を飛んでいく。 ――ここは魔界。 無数の魔物が住み、足を踏み入れた人間を容赦なく死の世界へ葬る、そんな魔王が支配する暗黒の世界である。 魔王の力は絶大であり、逆らえば一瞬で塵となる、そう魔物達は教えられてきた。 小さな魔物は声を聞くだけで震え上がり、強い魔物は魔王の右腕となり仕える。 そして魔王に認められた者のみ、自分の領土を与えられ支城を持つことを許された。 そんな右腕の一人が、魔王城を訪れていた。 灯りの乏しい長い石畳の廊下をカツカツと足音を鳴らしながら歩いてきたのは、氷属性の魔族ネージュだ。 艶のある白髪をなびかせ、アメジストのような瞳と雪のような白肌は、誰もが見惚れるほどの美しさであった。 それとは対象的にお供には、頭から首にかけての羽毛がない大型の鳥、コンドルを連れている。 ネージュは魔王が鎮座する広間へと入った。 「魔王様、ネージュにございます」 魔王の前へ赴き、片膝を付いて首を垂れる。 「うむ。ネージュよ、先の戦では良くやった。いい見せしめになったであろう」 人間界で勢力を拡大していた国が、魔界へ多くの兵士を送り込んで来たところをネージュは瞬く間に蹴散らした。どんなに強化された兵士でも、ネージュの敵ではなかった。 「有り難きお言葉にございます、魔王様。此度は勇者の一行が向かうであろう森の入口に魔法陣を仕掛けました。奴らが一歩でも森へ踏み入れば何百、何千もの魔物が魔法陣から溢れ出し、奴らに襲いかかりましょう…」
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