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魔王はふっと笑うと、脇に控えていた参謀のチュードに目配せをした。
チュードは赤黒く光る玉を持ち、ネージュの目の前に立った。
腰まである黒髪に冷徹な表情。知的な印象が漂う男だが、互いに魔王の右腕として上位に立ちたい、そんな思いがあった。いわばライバル同士である。
「ネージュ、魔王様からの褒美だ。丁重に受け取れ」
チュードからその玉を受け取ると、ネージュはギュッと胸に抱いた。
「魔王様! 有り難き幸せに存じます!」
「ネージュよ、また今後の働きに期待しているぞ」
「ははっ!」
力強く返事をし、ネージュとコンドルは広間を出た。
石畳を歩く音が跳ねるように響く。
――ネージュはスキップをして帰っていた。
「コンドル! いつもの報告をせよ」
ネージュの後ろを羽をバタつかせながらついて来たコンドルに声をかける。
「…えっ、あぁ…いつものですか?」
ギョッとした表情になるコンドル。
「なんだ、早く言え!」
「あぁ、はい…では。本日、魔王様に名前を呼ばれたのは2回でございます。あと…目が合ったのは4回かと…」
「うむうむ、そうか〜。前回より1回多く目が合っているな!」
ネージュはご機嫌に鼻歌まで歌い出した。
コンドルはやれやれという表情をしている。
「城へ戻ったら、書き記しておけ」
コンドルは「…はい」と小さく返事をした。
普段、戦いの際は背筋が凍るほど恐ろしく見える顔が、魔王の事となるとたちまちニコニコと笑顔になるのであった。
魔王の城を出るとネージュは、ピューイと口笛を吹き、現れた御空色のドラゴンに乗って自分の城へと戻った。
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