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ネージュの住む城は、一言で表すならば氷の彫刻である。装飾を施された城内もまた美しく、訪れた者は誰しも感嘆の声を漏らすほどだった。
何より彼女は完成時に魔王にお褒めの言葉を頂けたという事に誇りを持っていた。
「はぁ〜、見てみよ。この美しい輝きを…」
ネージュは先程もらった赤黒い玉をまじまじと見ていた。これは魔王から与えられる魔力の塊で、体内に取り込む事で今よりも強い魔力を手に入れることができる。
「…はいはい、遊んでないで早く取り込んで下さい。落としたら大変ですよ」
呆れ顔のコンドルが催促すると、渋々ネージュはその玉を口へと運んだ。
玉は口の中で溶けるように消え、魔力が体内へと流れ込む。
「んぐぅ…」
全身が熱くなり、痺れるような感覚とドクドクと速くなる鼓動に耐え、ネージュはさらなる魔力を手に入れた。
「魔王様…素晴らしい力を与えて下さって、ありがとうございます…」
うっとりと目を潤ませ、側に佇む「魔王らしき者」に話しかける。
それは、燃えるような赤黒い髪と血の気のない白い肌、漆黒の瞳で蔑むような鋭い眼つきは、魔王そのものであった。
「ネージュ様! こんなところ誰かに見られでもしたら、私たちの首が飛びますよ!」
コンドルは羽をバサバサと上下させ、ネージュの周りを駆け回る。
「…もぉ〜、お前は…心臓にも毛が生えておらんのか」
「なんですか! 『にも』って!」
コンドルが顔を真っ赤にして怒るので、ネージュは仕方無しに、魔王になりすましている魔物の変化を解いた。解放された魔物は申し訳なさそうに部屋を出て行った。
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