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代替可能な私
「でね、新米教師だからって舐められてるなぁって思ったの。小学校低学年って子供のようで、そういうことは意外と理解してるから」
「うんうん」
「で、どうしたら舐められないかなって考えた結果、『私にはアレがある!』って気付いてね」
「なに?」
「体育のドッジボールに女子チーム側で乱入して、男子どもをボッコボコにしてやったの」
そう言って、元熱血ソフトボール女子であり今は教師の友人・恵那は豪快に笑った。
社会人1年目の8月。学校が夏休みで暇だという恵那からの誘いで、私たちは約4ヶ月ぶりに大学時代を過ごした地を訪れ、ランチという名目の愚痴会を楽しんでいる。
「ええ……大丈夫だったの? それ」
「全然! あの年頃ってスポーツできることが正義みたいなとこあるから。悪戯男子たちは急に尊敬の目で見てくるようになったし、女子からはすっかりヒーロー扱いだよ。おかげで最近は授業中も静か」
目を細める恵那に笑顔を返しつつ、本当はちょっぴり嫌な気持ちの自分がいた。
その内訳は、嬉しそうな彼女に対する嫉妬が1%と、残りは、大好きな親友にそんな感情を向ける醜い自分への嫌悪感。
思えば恵那は大学時代から優れていた。ソフトボールもそうだし、それ以外にも、彼女は私と違いできることがたくさんあった。
きっと今の教師という仕事でも、彼女は彼女にしかでかないやり方で輝いているに違いない。
私にはそれが眩しすぎて、正直少し、辛い。
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