7人が本棚に入れています
本棚に追加
「柚葉はどう? 市役所のお仕事」
「んー。ぼちぼちかな」
「ぼちぼちって? どんな事してるの? やりがいはある?」
グイと身を乗り出されては、気乗りしないが話すしかなさそうだと観念する。
「交通課に配属されて、今は窓口業務を担当してる」
「へぇ、窓口!」
目を輝かせる恵那に慌てて言う。
「別に誰でも出来る仕事だよ! ルールがあって、その通りに書類を受け付けるだけだし!」
「へえ」
「そんなに人来ないし、ほとんどの時間は雑用してるだけだよ! まだ難しい仕事は何も分からないから」
「そうなの? でもさ、窓口ってことは市民の人に何か聞かれたら、その場ですぐ答えるんでしょ? それだけでも十分すごいし、その上空いた時間で雑務もこなすなんて、誰でも出来ることじゃないと思うなぁ」
「できるよ。だって私に出来るんだもん」
「……そういう意味じゃないのにな」
ぼそりと呟いた恵那は、おそらく「誰にでも出来る仕事なんて無い」と言いたいのだろうが、分かった上で、私は否定する。
私の仕事は恵那のそれとは違う。誰でもはできなくても、それが私である必要は一つもない、代替可能なもの。
いや。仕事も、か。
溜息を吐いた私を、恵那が心配そうに見ている。
最初のコメントを投稿しよう!