1.マッチングアプリにはご用心

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「問瀬も何かサークル入ればいいのに」 「……そういうの苦手だから」 私は少しぬるくなった揚げ餃子と白米を頬張って口をもごもごさせ、そう答えた。 ミステリ研究会は違うのかもしれないけど、私にはあの若者特有のワイワイした感じがどうにも性にあわない。 そもそも私は圧倒的インドア派、出不精を極めし女なのでそういった課外活動は一切してこなかった。 「だから、友達少ないんだよ」 「あぁ……。返す言葉がございません……」 「え、待ってごめん。そんなに落ち込まないで!俺も友達だよ」 無意識な言葉の暴力をくらい軽く落ち込むフリをすると、彼は必死にフォローし、さらに気をつかってくれ、うどんに付いていたひじきの小鉢をくれた。 私はありがたくそれを受け取り、自分のお盆の上に置く。 「話戻すけど、その合宿でいいトリックは思いついたの?」 「まぁね」 「なら、良かったじゃん」 「うん、有意義な時間だったよ」 そうは言ったが彼はうーんと悩む素振りをみせ、人差し指を顎に添える。 何か気に入らないらしい。 「でも、やっぱり現実味が足りないんだよ」 「それは仕方ないんじゃない?所詮、机上の空論というか」 「そうなんだけどさぁ。もっとリアリティがあって、難解な事件に出会いたい」 「なるほどねぇ」 眉間にしわをよせて真剣に考えている顔を見ると、なんだか面白くなって、私は思わず吹き出した。 「え、今笑うとこあった? さては俺のこと、馬鹿にしてるな」 「いやいや、そんなことないですよ、お兄さん」 「何その言い方」 彼は一気に不機嫌になり、わざとらしく頬をふくらませる。 さすがに、あざとい。 そんな彼を生ぬるく見守っていると、突然手を叩きだし、大きな目を見開いた。 その後、何を思いついたのか、にんまり口角を上げる。 このころころ表情が変わるところは高校生の時から変わっていないみたいで、ちょっと微笑ましくなる。 「問瀬のとこの兄ちゃん、刑事だったよね」 「え? あぁ、そうだね」 「じゃあ、殺人事件とか担当してるの?」 「んー、どうなんだろう。仕事のことはほとんど知らない」 そう、支眼の言う通り、私の兄は警視庁に勤める現役の刑事だ。 もう一緒には住んでいないので、お盆とお正月に会うくらいだし、どんな仕事をしているのか、今まで詳しく聞いたことはなかった。 私もドラマや映画でみるようなことをしてるのかなぁ、といった認識しかしていない。 そして、仮に事件について聞いたところで、そんな機密情報を教えてくれる気もしない。
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