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その疑問は解決されないまま、時間はまた無情にも進んでいった。 しばらくして、うだうだ机の上で考えていてもしょうがない、という支眼の意見で私たちは再び店の狭い玄関へと移動した。 玄関に出たところでしょうがないんじゃ?というのは私の独り言にしておこう。 支眼は庭の方へ低い段差を飛び降り、伸びた草の上やつるの間をおもむろに歩き出した。 あっちへ行ったりこっちへ行ったり、幼い子どもが探検でもしているように草の上を闊歩している。 その度に彼の履いている硬いジーンズと草が擦れ、しなってはなぎ倒されていった。 また、立ち上がったかと思えばすぐにかがんだり、時には草の上に這いつくばったりして、傍から見ると、かなり滑稽だった。 「何か見つかったー?」 私は茂みの中にいる丸まった背中に、声をかける。 彼は身体を起こし、服に着いた草を払いながら首を横に振った。 まぁ、そう簡単にポンポンひらめくわけないか。 彼はしばらく練り歩いた後、歩みを止め、さっきまでウォーターサーバーが置かれていた場所をじろじろ観察しだした。 今は小さなゴミ箱が1つがぽつんと置かれ、不自然な空間が広がっている。 まだ気になっているみたいだ。 360度、無いウォーターサーバーの周りを衛星の如く回っては角度を変え、隅々までよく見ている。 そして最後にさっと1枚写真を撮り、私の元へ戻ってきた。 「ちょっと。そんなことしたらまたお兄ちゃん怒られるよ」 「平気、平気。数木刑事は許してくれる」 そう注意したが、彼は聞く耳を持たず、軽くあしらわれた。 私は嘆息し、やれやれと手のひらを夜空の方に向ける。 「じゃあ寒いし、早く中入ろう」 「そうだね」 その提案には、素直に従ってくれた。 彼の短い冒険は無事終わっていたようで、どこか満足気だった。 「あぁ、そうそう」 支眼はそう切り出し、私の方を見る。 何?と聞き返すと、彼はもう1回数木刑事と話しをしたいと言う。 それはつまりまた何か新しいことを発見したということだろうか。 草とつるしか生えていない、こんな庭で? 無言の問いかけに彼はそうだよとにやり、不敵な笑みを浮かべていた。 「それに俺の考えが正しければ、すぐ帰れるよ」 「えぇ?」 なぜかコングラッチュレーション!とカタカナ英語で祝われ、盛大に拍手を送られる。 いや、それよりも。 もうすぐ帰れるってことは。 「犯人が分かったの?」 支眼は絹糸のような艶やかな髪をなびかせ、親指をグッと立てた。
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