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「ここで問瀬刑事に質問です」
「……何だ?」
「ウォーターサーバーを調べていた際に気づいたことはありませんでしたか」
兄は試しているのか、と怪訝な顔をしてメガネの角度を調整し、考えだす。
しばらくして、彼はあっと声を漏らした。
「お湯のレバーが故障していた……」
「そうです。ちなみに僕らの入店前に既に故障中の張り紙がありました」
きっと彼女はサーバーからお湯は飲めなかったはず、と彼は自分で自分の推理をあっさり葬った。
一体、今までのは何だったんだ。
「これらの点からウォーターサーバーに毒という可能性はほぼ0になりました。長くなりましたが、ここからが本題です」
支眼は一呼吸も置かず、次の話題へと移る。
ぽんぽん話題が変わるので私の頭はフル回転、シナプスがショートしてそろそろ煙をあげそうだ。
「ウォーターサーバーが使えなかったとはいえ、彼女はお湯を飲んだはず。ここが難しい」
「でも、他に何もありませんでしたよね?」
「数木刑事、そうなんです。でも無いなら、置けばいいんです」
支眼はスマホを指紋認証で開き、何やら操作し始めた。
眩しい光を放つそれに、注目が集まる。
そして、画面に1枚の写真が映し出された。
さっき彼が玄関先で撮っていたもので、ゴミ箱と角に寄せられた木製のスツールが写されていた。
「このスツールの上を見てください」
写真を2本の指で拡大し、4人が小さな画面に顔を近づけていく。
言われたスツールの上には500円玉ほどの面積の水が溜まっていた。
「この上にお湯を入れたやかんかポットが置かれていた。そうは考えられませんか?数木刑事?」
「……なるほど。じゃあこれはその時にできた結露ってことですか」
今日は夕方から急激に気温が下がって、少し肌寒いを超え最早寒かった。
そんな状態でやかんの中に温かいお湯を入れたあったのなら、蒸気がやかんの外に出て、水滴になったのもうなずける。
「さぁ、ここまでくればもう一息です。このやかんか何かを置いたのは誰か?」
支眼はスマホを太腿の上におき、今度はダブルピース、4本の指を立てて数えていこうとする。
「まず、マッチングアプリの櫻尾さん。松代より後に来店しているのでいつ、の時点で除外です」
彼はそう言って、右手の中指を折る。
「次に鹿野さん。お客さんがやかんなんてぶら提げてくるなんてほぼないです。ましてや店に入ってからなんてことも考えづらい」
次に左手、中指を折る。
残るは店長の長為さんと、店員の心島さん。
「残る2人で、あの時間店の外に出たというのは誰か?さらにやかんを置いて、すぐに片付けられたのは……」
「____庭の掃除をしていた心島さん」
私が呟くと、支眼はそうだよと頷いた。
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