6/7
前へ
/32ページ
次へ
「ここで問瀬刑事に質問です」 「……何だ?」 「ウォーターサーバーを調べていた際に気づいたことはありませんでしたか」 兄は試しているのか、と怪訝な顔をしてメガネの角度を調整し、考えだす。 しばらくして、彼はあっと声を漏らした。 「お湯のレバーが故障していた……」 「そうです。ちなみに僕らの入店前に既に故障中の張り紙がありました」 きっと彼女はサーバーからお湯は飲めなかったはず、と彼は自分で自分の推理をあっさり葬った。 一体、今までのは何だったんだ。 「これらの点からウォーターサーバーに毒という可能性はほぼ0になりました。長くなりましたが、ここからが本題です」 支眼は一呼吸も置かず、次の話題へと移る。 ぽんぽん話題が変わるので私の頭はフル回転、シナプスがショートしてそろそろ煙をあげそうだ。 「ウォーターサーバーが使えなかったとはいえ、彼女はお湯を飲んだはず。ここが難しい」 「でも、他に何もありませんでしたよね?」 「数木刑事、そうなんです。でも無いなら、置けばいいんです」 支眼はスマホを指紋認証で開き、何やら操作し始めた。 眩しい光を放つそれに、注目が集まる。 そして、画面に1枚の写真が映し出された。 さっき彼が玄関先で撮っていたもので、ゴミ箱と角に寄せられた木製のスツールが写されていた。 「このスツールの上を見てください」 写真を2本の指で拡大し、4人が小さな画面に顔を近づけていく。 言われたスツールの上には500円玉ほどの面積の水が溜まっていた。 「この上にお湯を入れたやかんかポットが置かれていた。そうは考えられませんか?数木刑事?」 「……なるほど。じゃあこれはその時にできた結露ってことですか」 今日は夕方から急激に気温が下がって、少し肌寒いを超え最早寒かった。 そんな状態でやかんの中に温かいお湯を入れたあったのなら、蒸気がやかんの外に出て、水滴になったのもうなずける。 「さぁ、ここまでくればもう一息です。このやかんか何かを置いたのは誰か?」 支眼はスマホを太腿の上におき、今度はダブルピース、4本の指を立てて数えていこうとする。 「まず、マッチングアプリの櫻尾さん。松代より後に来店しているのでいつ、の時点で除外です」 彼はそう言って、右手の中指を折る。 「次に鹿野さん。お客さんがやかんなんてぶら提げてくるなんてほぼないです。ましてや店に入ってからなんてことも考えづらい」 次に左手、中指を折る。 残るは店長の長為さんと、店員の心島さん。 「残る2人で、あの時間店の外に出たというのは誰か?さらにやかんを置いて、すぐに片付けられたのは……」 「____庭の掃除をしていた心島さん」 私が呟くと、支眼はそうだよと頷いた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加