2. 胡乱なお茶会

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窓から爽やかな日差しを浴び、私たちは長い廊下を歩いていく。 左側は大きなガラス窓が続き、開放感に溢れていた。 その窓からは和風庭園がよく見え、隅に植えられた紅葉は見事な赤色に色づき、ししおどしが数秒に1度かこんと頭を下げている。 右側はというと、同じデザインの障子戸が延々と続いていた。 「ここがお茶室だよ」 支眼はある戸の前で立ち止まり、障子をスライドさせる。 ……和室だ。 そこは私が想像できるような、至って普通の和室であった。 広さは12畳ほどで、部屋に入ってすぐ左手には掛け軸と椿の蕾を飾っている床の間があった。 日光で変色したのだろう、畳の色は全体的にくすんでいる。 私は室内をうろうろし、畳の中にある1つの穴にふらり吸い寄せられていった。 木枠に囲われた正方形の穴。中は空洞である。 「これは炉だね。後でここにお湯を沸かすお釜を持ってくるんだ」 不思議そうに謎の穴を見ていた私に、お釜を持つジェスチャーを交えて丁寧に説明してくれた。 やはり彼も一通り、お茶のことは知っているようだ。 「ここよりすごいところがあるんだ。そっちに行こう」 支眼の先導でお茶室を出て、渡り廊下を超え、私は離れにやってきた。 「問瀬、開けてみて」 どうぞと恭しく促され、私は両手でそっと引き戸を開けた。 室内は、……すごかった。 まず目に入ったのは壁際のガラス棚だった。 色とりどりのお茶碗が足元から天井まで並べられ、花模様のもの、釉薬の色を活かしたもの、さらにはベネチアンガラスのようなものまで種類、形ともに様々で圧巻だった。 また、普段からよく手入れされているのか、お茶碗は埃ひとつ被っていない。 その他にもガラスの棚はいくつかあり、お茶に使われるであろう道具が豪華絢爛、並べられていた。 そうか、ここは茶道具を保管する部屋だ。 「これ、100万円するらしいよ」 「えぇ!どれどれ?」 支眼の指先にある、ガラス細工(切子か何か)のお茶碗に注目する。 確かに美しいが、100万円の価値があるかどうかは私の審美眼では計り知れなかった。 きっと著名なアーティストの作品なのだろう。 ここには他にも、高価な茶道具がたくさん集められているようだった。 もちろん、私にはその判別はつかないが。 この部屋で唯一、庶民の私に馴染みがあったのは、突っ張り棒にS字フックで吊り下げられた簡素な造りのすだれくらいだった。 「前に来た時より、数増えてる気がする」 「あぁ、ほんと?」 「うん。コレクションなんだってー」 支眼は部屋をぐるり見回し、おばあちゃんやるねぇとひとしきり感心していた。
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