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「え、ほんとに解けたの?」
「うーん、多分ね。まぁ、でも結局、俺の推測の域はでないかな」
「なぁに、かっこつけた言い方して。はやく聞かせてよ、探偵さん」
そうけしかけると、支眼は天に向かって軽く拳を振り下ろし、私へ対抗の意思を表した。
その後に、それっぽい咳払いをし、本当に犯人を問いつめるのかと思うような険しい表情を作る。
「じゃあ、早速」
彼はゆっくり腕を組み、わざとらしい感じで重々しく口を開いた。
私もその空気に飲まれ、ごくりと唾を飲み込む。
「じゃあ、結論から。ピアノ習い始めた?」
「え!?」
……とにかく、驚いた。
びっくり。ただそれだけが先にくる。
いやなんで、なんでわかったの?
まだ頭の中で整理しきれていないが、とりあえず結論を言うと、正解、だ。
本当にヒントになるようなことは言っていないし、見せていない。
ワクワクと私の正誤判断を待つ彼を見て、私は平静を装って答えを返す。
「まずは、お見事。正解です」
「お、当たってた?」
支眼は嬉しいー、とすぐに見えない犬の耳を生やしてぽわぽわ喜び、こちらを向く。
その姿を見て良かったねぇと微笑ましくなる気持ちと、なんで分かったんだ?という気持ちが入り交じり、私はぎこちない笑顔を浮かべる。
「あの、なんで分かったの?」
「えー、聞きたい?俺の推理!」
今考えられる1番手前の質問に、彼は素直に嬉しさを表し、そしてその種明かしをもったいぶった。
一瞬うざいなと思ったが、それよりもなぜわかったのかを聞きたくなり、先をせがむ。
「まぁ1番気になったのは、爪かな」
「爪?」
「そうそう」
自分の指先を眺めていると、彼の関節ばった大きな手が私の爪の先を指さした。
そして、その爪の周辺の机の上にくるり、何度か弧を描く。
その度に私の指先をすっと掠め、少しくすぐったい。
「爪がさ、綺麗に切りそろえられてるって思って」
「えぇ、うん」
「夏休み前までは、ネイルとかしてたでしょ」
確かに、前期の間、頻繁にネイルをしていた。
前期の間だけと言わず、大学になってからそういえば欠かしたことはないかもしれない。
よく見てるなぁ。
でも、それなら他の理由だって考えられる。
例えば、新しいバイトで禁止になったとか、料理教室に通いだしたとか、あとはシンプルに私がネイルに飽きたとか。
そんなことを自分で考察していると、俺割とネイルとか気づくタイプの男だから、とドヤ顔で要らぬ補足をされた。
うるせぇー。
私は彼を適当にいなしておく。
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