1.マッチングアプリにはご用心

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「え、ほんとに解けたの?」 「うーん、多分ね。まぁ、でも結局、俺の推測の域はでないかな」 「なぁに、かっこつけた言い方して。はやく聞かせてよ、探偵さん」 そうけしかけると、支眼は天に向かって軽く拳を振り下ろし、私へ対抗の意思を表した。 その後に、それっぽい咳払いをし、本当に犯人を問いつめるのかと思うような険しい表情を作る。 「じゃあ、早速」 彼はゆっくり腕を組み、わざとらしい感じで重々しく口を開いた。 私もその空気に飲まれ、ごくりと唾を飲み込む。 「じゃあ、結論から。ピアノ習い始めた?」 「え!?」 ……とにかく、驚いた。 びっくり。ただそれだけが先にくる。 いやなんで、なんでわかったの? まだ頭の中で整理しきれていないが、とりあえず結論を言うと、正解、だ。 本当にヒントになるようなことは言っていないし、見せていない。 ワクワクと私の正誤判断を待つ彼を見て、私は平静を装って答えを返す。 「まずは、お見事。正解です」 「お、当たってた?」 支眼は嬉しいー、とすぐに見えない犬の耳を生やしてぽわぽわ喜び、こちらを向く。 その姿を見て良かったねぇと微笑ましくなる気持ちと、なんで分かったんだ?という気持ちが入り交じり、私はぎこちない笑顔を浮かべる。 「あの、なんで分かったの?」 「えー、聞きたい?俺の推理!」 今考えられる1番手前の質問に、彼は素直に嬉しさを表し、そしてその種明かしをもったいぶった。 一瞬うざいなと思ったが、それよりもなぜわかったのかを聞きたくなり、先をせがむ。 「まぁ1番気になったのは、爪かな」 「爪?」 「そうそう」 自分の指先を眺めていると、彼の関節ばった大きな手が私の爪の先を指さした。 そして、その爪の周辺の机の上にくるり、何度か弧を描く。 その度に私の指先をすっと掠め、少しくすぐったい。 「爪がさ、綺麗に切りそろえられてるって思って」 「えぇ、うん」 「夏休み前までは、ネイルとかしてたでしょ」 確かに、前期の間、頻繁にネイルをしていた。 前期の間だけと言わず、大学になってからそういえば欠かしたことはないかもしれない。 よく見てるなぁ。 でも、それなら他の理由だって考えられる。 例えば、新しいバイトで禁止になったとか、料理教室に通いだしたとか、あとはシンプルに私がネイルに飽きたとか。 そんなことを自分で考察していると、俺割とネイルとか気づくタイプの男だから、とドヤ顔で要らぬ補足をされた。 うるせぇー。 私は彼を適当にいなしておく。
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