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やわらかな風が髪の間をすり抜け、美しい虫の音を鼓膜まで運び、秋の訪れを感じさせる。 日が暮れるのも、もう随分と早くなった。 私は無事本日の授業を終え、軽い足取りで約束の店に向かっていた。 温かみのある街灯に照らされた小道を進むと、見覚えのある金髪の人影を発見する。 「お待たせ、支眼(しめ)」 そう言って駆け寄ると、彼はスマホから顔をあげた。 「あ、来たきた。お疲れー」 「お疲れ様。ここ?」 お互いを形式的に労い、私は彼の背後のお店を指さした。 柿渋色の木造建築で、外観は和モダンな感じ。 重厚な黒いアイアンの扉には、控えめにopenの札がかけられている。 その扉の横には窪んだスペースがあり、小さな庭もあった。 ちょうどいい感じの緑が茂り、夏休みに育てたゴーヤのようなつるが窓に向かって傾斜をつけ、絡まっている。 早速私は重い扉を引き、支眼に中へ入るようにと目線で促した。 「問瀬(といせ)かっこい!イケメン!」 彼は私を大袈裟に褒め、私の肩にポンっと手を置く。 私がその手を無下に払うと、支眼はまだ酔ってもいないのにふらついて、何かにぶつかって鈍い音をたてた。 つるの裏に設置されていたウォーターサーバーにぶつかったみたいだ。 支眼は左腕をさすり、痛いなぁと文句をたれる。 「しっかりして。入るよ」 「ごめんごめん。暗くてよく見えなかった」 そんな彼を急かし、私たちは店内へと進んだ。 中へ進むと従業員の茶髪イケイケお兄さんが明るく出迎えてくれた。 支眼が人数を告げ、私たちは窓際のテーブル席に案内される。 店内はテーブル席が3席、カウンター席が3席とこじんまりしていた。 ナチュラルウッド、ウッド、ウッドとどこもかしこも木が基調になっていて、ほどよい温もりと親しみが感じられる。 オシャレなお店にありがちな白熱灯の熱もうっすら感じながら、私はさらに周囲を見渡した。 店内には私たち以外にカウンター席に若い女性が1人と、隣のテーブル席に男女が1組座っていた。 18時にしては人が入っている。 それは支眼も感じたようで、早めに来て良かったねーと呑気にメニューをめくっていた。 私もラミネート加工されたメニュー表を手に取り、規則正しく並んだ文字列をながめる。 あ、ピザ。 食べたい。 「一緒にピザ頼も」 「お、いいね。何にする?」 「うーん、やっぱりマルゲリータ?クワトロ・フォルマッジもいいなぁ。チーズ好きだし」 と、何を頼むのか頭を悩ませる私。 よし、マルゲリータにしよ。 私は決まったよと合図し、その後支眼は卓上ベルを押した。
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