用法容量

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用法容量

『用法容量を守って』  さっきの先生の言葉を思い出す。  薬を飲んだり使用する時には、説明をきちんと読まなければならない。あたしは、袋の裏側を確認してみた。 「……な、に、これ」 ─────※───── 戸部くんからの気持ち。  ⚫︎新木さんへの想いを込めて、しっかり伝わるように、丁寧に書いて貯めています。一つずつ、しっかりと受け止めましょう。  ⚫︎いくつ使っても使いすぎることはありません。しかし、足りなくなることがあるかもしれません。その時は戸部くんに相談しましょう。 ─────※─────  三個目、四個目の紙を開く。 〝素直じゃないけど素直〟、〝考えると苦しくなる〟、〝一緒にいたい〟。  次から次へと、あたしはおくすりの中の言葉がほしくなる。  紙に書かれている文字が、いつも見ている渉の文字と同じだから、間違いない。これは、渉が書いた字だ。  毎日保健室へ通っていたのは、これを書くため? 渉は、美香子先生のことが好きなんじゃなかったの? これは、本当は美香子先生への言葉なんじゃないの?  疑ってしまう気持ちのまま、最後に開いた紙。今まで以上に折りたたまれていて、開くのに時間がかかる。広げて見えたのは、自信無さげに書かれた小さな文字。〝未羽が好き〟と、書かれていた。  手のひらいっぱいになってしまった言葉のかたまりを袋に丁寧に戻すと、あたしは湧き上がってくる涙を堪えながら、渉の待っている昇降口へと急いだ。
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