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いずれにせよ、詳細は検死次第といったところだろう。一姫は監察医に死体を検死にまわすよう要請し、刑事たちに仏を運び出すよう指示を出した。やがて、担架が運ばれてくる。それから仏が二人の男によって持ち上げられようとした、その時だった。
「ちょっと待って」
素早く担架に近づいた一姫は男たちを制止し、仰向けに乗せられようとしている仏の背中を注視した。
群青色のスーツの背面が、破けている。鎌ヶ谷が仰向けに天を仰いでいたので気がつかなかったが、見るからに高級感漂うスーツの背中の生地が無惨に縺れ、一部が破けていたのだ。それはまるで、何か硬くざらりとしたものでこすられたかのように。
「ありがとう、もういいわ」
ひらひら手を振って男たちを解放すると、翔子は鑑識課長を呼び出す。召喚された小太りの男は、「はい……なんでしょう」とびくびくしながら訊ねた。
「犯人は鎌ヶ谷を殺害し、仏を引きずって移動したと考えて間違いないわ。このヘリポートのどこかで、青い繊維とかって見つかってない?」
「あ、はい、ちょうど今発見したところでして……」
鑑識課長が目をそらした先には、つらつらと番号札が置かれていた。それはちょうど、鎌ヶ谷が倒れていた位置から、ヘリポートに登るための簡易階段付近まで伸びていた。やはり、一姫の推測は間違っていなかったらしい。
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