姉の恋の話

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 明日から夏休み、蝉の声をうるさく聞きながら靴を履いて下校しようとしていると、先輩と一緒に階段から降りてきた姉に呼び止められた。  予想では、薬を飲ませて数日したら、あっという間に振られた姉さんを僕が慰める羽目になるんだろう、と身構えていたんだけど……。  まぁ、憧れの北田先輩と付き合い始めてから、家でも少しだけお淑やかになった姉を見るのは面白いし、振られたなんて悲しい結末よりよっぽどいい。  三年の靴箱に靴を取りに先輩がいってしまうと、「ねぇ」と陽毬が僕に囁いてきた。 「いつまで経っても私、先輩に振られないんだけど……変じゃない?」 「変じゃないよ。姉さんの魅力で北田先輩を落とせたってことでしょ」 と、僕が言うと姉が決まり悪そうな笑顔を顔に浮かべる。 「だって、この間デートの時つい一番大きいバーガー頼んで、大口開けてガブリついちゃったし。一緒に映画見た時も、つい癖で貧乏ゆすりしちゃったし」  僕は唖然としてしまった。女らしく変わったなぁと言うのは気のせいだったのか。まさか、あのゴリラっぷりを先輩の前で発揮しているとは。
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