姉の恋の話

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 口の周りを食べかすだらけにしてポテチを貪り食らっていた姉の姿が脳裏に浮かんで一瞬気が遠くなる。  いや、暑いからかな。  くらっとしちゃったのは……。  つい、逃避しそうになった僕に、 「習慣って、怖いよね」 と、姉が恥ずかしげにモジモジする。その時、 「お待たせ、陽毬ちゃん」 と、先輩が戻ってきた。 「あれ、まだ靴持ってきてないの? 待っているから取っておいでよ」  姉が靴を取りに行くのを見送ってから、僕は北田先輩に聞いてみる。 「先輩、惚れ薬、まだ効いてるんですか」  実は僕に惚れ薬をくれたのは北田先輩だ。  その先輩に、驚いたことに姉は惚れ薬を直接手渡ししたそうだ。すごいというか怖いもの知らずというか、どうやったらそんな勇気が出るんだ? て言うかどう言って渡したんだろう? 「これ惚れ薬です。ぜひ飲んでください」とか? いや、絶対飲まないでしょ。そんなふうに言われたら。そもそも怪しいって思うだろうし。そういうこと考えないのかな? うちの姉は。  先輩も姉もその時のことについて聞いても話してくれないから真相はわからない。ただ、そのことを聞いた僕の感想といえば、「ゴリラ恐るべし」。  うちの姉、最強だ。もう、何も言えねー。  僕の問いに、先輩はクスッと笑って言った。 「惚れ薬は飲んだふりして捨てたよ。研究データも消した」
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