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「恭子、宮下君と別れたの。昨日は仲良く二人でいちゃつきながら下校したのに。それなのに、今日になったらもう、違う人と付き合ってるのよ!」
まるで自分しか知らない秘密のようにしゃべるが、伊織は学校でその話をすでに聞いていた。でも、知っていると言うと多分姉はがっかりするので、さも今初めて知ったみたいに思い切り目を見開いて姉を見る。
「え? 相手は誰?」
「一年の日吉君って子」
伊織は唾をごくりと飲み込んだ。
「へ、へぇ……」
「お陰で宮下君、やさぐれちゃって。気の毒になっちゃった」
「えっと……、姉ちゃんはウチの部長の北田先輩が好きなんじゃないの?」
「私? そうよ。私が好きなのは北田航先輩。やぁね、当たり前じゃない」
「だってまるで、恭子さんが宮下先輩をフって悲しませたことが許せないみたいに聞こえたから」
「違うわよ。私はあくまで恭子の味方」
「じゃあ、何を怒ってるの?」
「口さがない連中が、恭子のことを尻軽女って陰で言いふらしているのが許せないの!」
伊織は「あぁ」と頷いた。姉は食欲ゴリラだが、正義感は強い。大好きな親友の悪口を聞いて相当頭にきたのだろう。
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