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「恭子さんが日吉と付き合うなんて、何かの勘違いだよ。もしくは気まぐれとか。きっと明日になれば彼女も目が覚めるんじゃないかな」
「気まぐれであんなに好きだった宮下君をフらないでしょ。恭子、見た目は派手だけど中身は真面目なんだから」
「……でもほら、女心と秋の空っていうし」
すると姉が伊織をジーッと見て顔を近づけてきた。伊織はソファーの端に追い詰められる。
「そういえば日吉君って、伊織と同じ部活よね」
「う、うん。科学研究部」
追い詰められた感じの伊織が口元を引き攣らせて答えると、姉がパチンと両手を合わせて頭を下げた。
「友達のよしみで、恭子と別れるように言ってくれない?」
「え! やだよ」
「だって、絶対おかしい! きっと何か事情やカラクリがあるに違いないもの!」
ソファの肘置きにもたれていた伊織はヒクッと顔をこわばらせる。
「……どんなカラクリがあるって言うのさ」
「それは〜、チョチョイのチョイって感じで?」
眉を寄せてそう言った姉に、伊織は「魔法かよ」と気の抜けた声を出した。
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