姉の恋の話

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「私も女だけど、そんなにコロコロ気持ちが変わったりしない。あんたも知っての通り北田先輩一筋だから」 「姉さんは、先輩に、中学から足掛け五年の片思いだもんね」 「そうなの、北田先輩かっこいい上に頭もいいからライバルが多くて。先輩を追いかけて猛勉強で同じ高校に入ったけど、流石に大学まで追いかけるのは頭的に無理だし」  よし、話が切り替わったぞ、と伊織が心の中でガッツポーズを決めたのも束の間、 「やっぱり日吉、怪しいわ。捕まえて白状させてやる!」 と、姉が拳を握りしめた。 「わー! やめて。危ないよ」 「大丈夫。私、空手白帯だから」 「空手をやってたの、幼稚園の頃でしょ。それに白帯って。も〜、本当のこと言うから」  伊織は思わず口走ってしまい、ハッと自分の口を手で覆った。陽毬が怪訝な表情で弟を見る。 「本当のこと?」 「なんでもないよ」  さっと目を逸らした弟に、陽毬が(はぁん?)と器用に片眉だけあげる。 「伊織」 と、呼ばれてついピクッと反応してしまったのは悲しいかな、弟の習性だ。 「あんた、何か知ってるのね?」
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