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ジロリと睨まれて、伊織は(あぁ…)と目をつむった。
*
そして、夜。
友人からの電話を終えた伊織は、ソファーに座る姉の隣に腰掛けた。電話の最中も、姉が急かすような視線を向けてきているのは気づいていた。
「あの後、午後の授業が始まって喋れなかったし、伊織どんどん帰っちゃうから」
と、陽毬が不満げに頬を膨らませる。
「帰りだって、一年の教室にわざわざ迎えに行ったのに、先に帰っちゃってたし」
伊織は弱り顔で姉を見た。こうなると彼女は聞き出すまでしつこく粘って自分に付き纏うことだろう。伊織は、大きなため息をつくと、
「絶対、秘密の話だからね?」
と、姉に念を押した。
伊織の話を聞いた陽毬は、
「惚れ薬?」
と、素っ頓狂な声を出した。
姉の声が大きかったので伊織は思わずキッチンにいる母を気にする。こんな胡散臭いこと、親には聞かせられない。
眉を顰めて姉を見ると、姉にも伊織の意図は伝わったようで、口を抑えた彼女が刻々と首を縦に振った。
「そう。科学研究部の先輩が作ったんだ」
「そんなもの、漫画やテレビの中だけと思ってた」
「信じる?」
「信じられないけど……」
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