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「その先輩は、好きな人に使うつもりで作ったみたいなんだけどさ」
「使わなかったの?」
「使ったよ。でも、効果がなかったって、残りを僕らにくれたんだ。日吉と斎藤と、それから僕に」
「斉藤……って、確か一年のめちゃ可愛い子と付き合い出したっていう?」
「そう、そいつ」
「惚れ薬……二人には効き目があったんだね」
喋っているうちに興奮してきたのか姉の頬が紅潮してくる。そんな姉の様子を冷静に見ながら、伊織は「でもね」と切り出した。
「相手に飲ませても効果は一時的。三日もすれば相手が自分のことを好きな気持ちは消えてしまう。好きな子に、好き好き言ってもらって有頂天になってからの破局……って、耐えられる?」
「耐えられないと思う……でも好きになってもらえるんだよね。なら、薬が効いてる間に本当の両思いになったら」
「どうやって両思いになれたか確かめるのさ」
伊織は顔を歪めて反論した。
「薬が効いている間は、どう聞いても相手は「あなたが好き」って答えるよ。しかもそれが自分の本気だと思って言ってくる。でも、薬が切れたら? 天国から地獄に真っ逆さまじゃないか」
「日吉君はその薬を恭子に飲ませたのね」
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