永き眠りからの目覚め

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 新しい年度を迎え、私は高校に進学することとなった。  高校といっても、私の通う学校は『冷凍睡眠(コールドスリープ)』をしていた未成年が通う支援学校だ。そのため、学年が全く違う生徒たちが各々勉強をして暮らす事になる。  私たちの年齢は出生から現在までの期間から冷凍睡眠期間を差し引いて算出される。そのため私は今年で16歳となる。  私のクラスには同い年の女子が一人いた。  名前は安藤 理沙(あんどう りさ)。彼女は私よりも遅く生まれており、約20年間冷凍睡眠をしていたらしい。ちなみに冷凍睡眠期間は学校の中で私が一番長かった。 「こんなん習ってないよーー」  入学初日に受けた学力検査テストの答え合わせを二人で行っていると理沙が不意にそんなことを嘆いた。数学の『図形の相似』の問題だった。 「中学3年の時にやったじゃん」 「えーー、うそーー。やってない、やってない。全然記憶にないもん。賭けてもいい」 「んーーー、カリキュラムから一度消えてまた戻ったのかな。あ、でもこの問題『中学2年レベル』って書いてある。やっぱりちょっと変わってるね」 「いやいや、中学2年でもやってないって」  同い年とはいえ、生きてきた時代が違うため、タイムカルチャーギャップによる会話のずれが起こることが多々あった。私のいた時代とは全く異なっているものもあれば、以前と全く変わらないものもある。それを探るのがなんだか面白かった。  昔はこうして友達と気軽にはしゃべれなかった。みんな私の体を気遣い、下手なことは言わないと言葉を選んでいた。だから会話がうまく弾まなかった。  でも今は違う。互いに冗談を言い合える。寄り道して遊んだり、旅行で遠出したりできる友達がいる。  私はようやく夢のスクールライフを送れるようになったのだ。
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