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「ふー、あっつあっつ」
「ほんとだねー」
夏人はさっきから「あっつあっつ」と言いながら隣でうちわをパタパタさせている。
「遊園地なんて久々だねー」
「でも休みだからやっぱ人も多いなー。ふー、あっつい」
夏人の言うとおり、周りは人、人、人。
酔うまではいかないけど、あまり多すぎると、人の波で酔いを起こしそうだ。
「あー、あっつい。何か冷たいもんほしーな。アイスでも買うか?」
「もー、そんなにあっついんなら、家の中で過ごせばよかったのに」
久々のデートだというのに、さっきから「あっつい」しか言わないこの男。
確かに私も暑いと思うけど。
カンカンデリデリ、蒸し焼きにされそうなほどに暑いのに、気持ちはクールダウンでさめざめになりそう。
来て早々こういう気持ちにさせられてしまって、ちょっと悔しいから、もっと「あっつく」なることをしてやろうかな。
「夏人」
「ん?」
私は右手で夏人からうちわを奪う。左手にもうちわ。
二つのうちわで少し背の高い彼の顔を挟んで私の方に引き寄せる。
「……!」
うちわで挟んだ彼の顔を離してやったら、夏人の顔は見てるだけでも「あっつく」なるくらい真っ赤っ赤になっていた。
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