怪しい薬屋

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 さてと。若いのに薬を売って、地獄からやっと解放された。  50年というとてつもなく長い時を無駄にした。取り戻さなければ。今の僕は、どこから見ても20歳の若者だ。 ……しかし、体がだんだん重くなっているような気が…。  不思議に思い自分の手を見ると、シワの寄った老人のそれだった。近くの店のガラスを見ると、見た目が完全に老人と化していた。 「なぜ?」  ただただ疑問で、記憶を辿ると、50年前、不老不死という言葉に惹かれあの薬を売られたときのことを思い出す。 「買ってくれてありがとう!……いいことかはわからないけど、一つだけ伝えるね。この薬、とにかく地獄だから。使っても使わなくても地獄だ。気をつけろ。これは、ある意味の忠告でもある」  薬の売り子になってから、あの地獄は、解放されないことだと思っていた。が、違った。 「使っても使わなくても地獄、か」  不老不死なんて言葉に釣られた単純な僕にぴったりだな、と思いながら、体が「薬」に(むしば)まれていくのを、人事(ひとごと)のように感じていた。
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