夕闇に、攫って

「今は何してるの、ペットショップの店員？」
「えっ」
「言ってたでしょ、将来はペットショップで働きたいって」

そんなこと言っただろうか。疑心が顔に出ていたのか、彼女は続けた。

「中学のときだよ、覚えてないの？」

中学か。記憶を思い起こそうとするが、どうにも駄目だった。もう少し詳しく聞いてみれば、何かわかるだろうか。

「ごめん、中学のいつごろだっけ」
「えぇ、本当に覚えてないんだ。卒業式で言ってたでしょ」

中学、卒業式、ペットショップ。
頭の中で複数の単語が反芻(はんすう)して、曖昧だった記憶が鮮明になっていく。
そうだ、確かに言った。でも、卒業式って。