夕闇に、攫って

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「思い出した」 「やっとかー」 「よく覚えてるね、そんな昔のことなんて」 「記憶力には自信があるの」 彼女は呆れながらも、笑みを浮かべた。 昔と変わらない笑顔。だからこそ、僕は彼女が彼女だと気づけた。 不安になって、改めて彼女を見る。 背は僕より少し小さく、華奢(きゃしゃ)な身体はどこか儚げで乱暴に触れたら壊れてしまう気さえする。肩までかかった黒い髪が一本一本、意思を持って揺れているように思えた。くっきりとした丸目は赤子の瞳を思わせ、それを隠すようにある前髪が背徳的だと錯覚させる。 やはり彼女は。 「どうしたの?」
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