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「ねぇ、夕闇の伝承って知ってる?」
「……」
息を呑む。
彼女は僕の返事を待たず、まるで子供に読み聞かすように語り始めた。
「夕闇っていうのはね、太陽と月の境目にできる空間? 世界みたいなとこでさ。こんな言い伝えがあるの」
僕の顔をちらりと見る。
「死者に会えるんだって。なんでも、あの世とこの世が交わる場所だからだとか」
「……」
「でも、そこから帰ってきた人はいないの。みんな、死者に『連れていかれるから』」
「え」
僕が話に割って入ったことに、彼女はひどく動揺していた。
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