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「知ってたの」
「…うん、ここが夕闇なのも―――」
続きの言葉を発しようするが、声が震えて、言葉が詰まる。
今更、言うのをためらっているのだろうか。
無理やり深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。
意を決する。
「キミがもういないことも、知ってる」
彼女は6年前に交通事故で亡くなった。卒業式から3日後のことだ。
葬式が執り行われたが、参列しようとは思えなかった。彼女の死を認めてしまう気がしたからだ。時間が解決してくれるのを願っても、彼女の存在を忘れられるわけがない。思い出すたびに泣き、いないと自覚するたびに叫ぶ日々が続いた。それから6年が経ち、流れる涙は枯れ、吐き出す言葉も見つからなくなったとき、夕闇の伝承の話を聞いた。迷信だとは思わなかった、方法はもうこれしかないのだから。
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