夕闇に、攫って

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「そっか、そうだよね。たまたま、ここに来たのかと思って、色々考えちゃってた」 彼女はどこか納得したように、口角を上げた。 その時、僕を照らしていた太陽が完全に隠れ、闇が世界を覆う。 あの世が近い、本能的に悟った。 「知ってて、会いに来てくれたんだ。嬉しいよ」 「僕もキミに会えてよかった」 「わがままを言ってもいい?」 「うん」 短い間を置いて、彼女は言った。 「私と、ずっと一緒にいてほしいの」 「もちろん、そのつもりで来たんだ」 「ありがとう。じゃあ、私の手を握って」 言われた通り、彼女の手を握る。 柔らかい。この感触も昔と変わらないのだろうか。 ふと、ある言葉が脳裏に浮かび上がる。これがあの世への鍵か。 「ふふ、ごつごつしてる。今、君の心に浮かんだ言葉を口に出してほしいの。あの世に行きたいと強く願いながら」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加